エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

「お前、なんでこんなところに」

 会計を済ませた彼が、こちらに歩み寄る。

「さっきまで仕事で近くのテレビ局に……。司波さんは?」
「帰るところだ。繁忙期でなければ、水曜はフレックスタイムで勤務時間を短縮している」
「へえ、中央省庁も意外と柔軟なんですね。あっ、そうだ。紹介します」

 くるっと後ろを振り返り伏見くんを紹介しようとしたら、その前に彼が私の一歩前に出て、自ら挨拶した。

「料理教室でもお会いしましたよね。僕は花純さんのアシスタントの伏見と申します」
「司波です。婚約者の花純がいつもお世話になっております」

 司波さんが当たり障りのない挨拶を返したところで、店員が紙の手提げ袋を彼に渡した。さっき注文していたコーヒーと料理だろう。

「それ、今夜の夕食ですか?」
「ああ」
「ロコモコなんてかわいいもの食べるんですね。なんか似合わないです」
「うるさいな。好きなんだからいいだろ」

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