エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
いつものぶっきらぼうな返しにクスクス笑っていたら、伏見くんが私の顔を覗いて遠慮がちに言った。
「花純さん、俺、邪魔みたいなんで帰ります。お茶はまた今度にしましょう」
「そんな、気にしないでいいのに」
「気にしますよ。婚約者さんがずっと睨んでますし」
え? 別に睨んでなんか……。あれ? 本当に睨んでる。
伏見くんを見つめる司波さんの眼差しは険しく細められ、敵を威嚇する猛獣のよう。
「じゃあ花純さん、また明日の料理教室で」
「うん。また……」
店を出ていく伏見くんに手を振り、おそるおそる司波さんに視線を戻す。すると、彼の鋭い眼光が今度は私に向けられ、びくっと身がすくむ。
「あの、なにか怒ってらっしゃいます?」
「別に」
氷のように冷ややかな声が飛んできた。
「絶対怒ってるじゃないですか……」
どうしたらいいのだろうと内心焦っていると、ため息をついた司波さんがガシッと私の手首をがしっと掴んで店の出口に引っ張っていく。