エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
つい必死に否定してしまい、直後にひとりで恥ずかしくなった。これじゃあまるで喜んで手を繋いでいるみたいだ。
真っ赤であろう頬を隠すようにうつむき、ちらっと見上げた司波さんの横顔は、感情の読めないポーカーフェイス。
私ばかり翻弄されて悔しいが、私にできる仕返しは料理で彼を唸らせることくらいだ。
絶対にカフェより美味しいロコモコを作ってみせよう。
騒がしい胸をなだめつつ、私はひそかにそう決意した。
「司波さんって、酢豚に入ってるパイナップルは許せる方ですか?」
「許せる。というか、わざわざパインを探して食べる派だ」
「いいですねぇ。イメージが固まってきました」
スーパーの中を歩きながら司波さんにいくつか質問をし、彼の求めるロコモコのレシピを、頭の中で組み立てる。
司波さんは隣でカートを押してくれていて、ポンポンと材料をカゴに投げ込む私を、物珍しそうな目で見ていた。
材料を調達した後、二度目の来訪となる彼のマンションにお邪魔した。
調理に入る前に、母に【夕飯は食べてくるね】とメッセージを打つと、【ははーん、さては今夜も司波さんと一緒ね】と返事がきた。