エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
会話をしながら、買ってきた二キロの米を袋から保存容器に移し、計量カップで二合はかって炊飯器の内釜に入れる。
本来は別容器で米を研いだ方が内釜の表面が摩耗せず長持ちするのだが、司波さんはものぐさそうだし、今回は内釜で研いでしまうことにする。
「最近は精米技術が発達しているのであまり力を入れて研ぐ必要はないんです。二、三回、軽くすすいでください」
「今の時期はいいが、冬は難儀しそうだな。水は冷たいし、手は荒れそうだし」
指示通り軽めの力で米を洗いながら、司波さんがぽつりとつぶやく。
「そうなんですよね。だからといってお湯を使うと糠の風味が米について美味しくなくなってしまうし……それ以外にも料理は水仕事を避けて通れないので、私は冬に限らず手がガサガサです」
今の季節はそれほど乾燥が目立たないが、一般の女性に比べたら、綺麗とは言えない手だ。
テレビの収録に参加した時、女性芸能人やアナウンサーの白魚のような手を見て、ちょっぴり劣等感を覚えることもある。