エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

「だから……お前の手が荒れていようが、太ろうが痩せようがハゲようが、俺が嫁にもらってやるって言ってんだよ。わかったか」

 上から目線なセリフとともにジロッと睨まれたが、腹は立たなかった。というかむしろ……。

「わ……わかりました」

 司波さんが欲しいのは、私自身ではなく私の作る料理。『嫁にもらってやる』なんて言葉にも、甘い意味はない。

 頭ではそうわかってるのだけれど、心がその意味を勝手にはき違えて、勝手に舞い上がってしまう。

 これだから恋愛初心者は……と自分をたしなめつつ、準備のできた内釜を炊飯器にセットして、次の作業に取りかかった。


 司波さんと協力しながら、三十分ほどで料理は完成した。

 陶器の真っ白な丼にふっくら炊いたご飯、細かく切ったパイナップルを練り込んである特製ハンバーグ、半熟の目玉焼きを順番に乗せ、アボカドとトマトの角切りを添えた。

 ケチャップベースのソースにもパイナップルを使い、全体的にトロピカルな味わいに仕上がっている。

< 88 / 233 >

この作品をシェア

pagetop