エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
半分夢の中だったのに、彼女の悪戯で急に覚醒した俺は、笑いをかみ殺すのに必死だった。
……なにをしているんだコイツは。俺に暗示をかけたつもりなのか?
馬鹿げた行為だと呆れる反面、彼女の茶目っ気を好ましく思う自分もいた。
もともと俺は女性を喜ばせるような言動が苦手なため、今まで交際した数人の女性たちから『なにを考えているのかわからない』と言われ、最終的に振られるのが常だった。
まぁ実際、どの女性にも本気ではなかったから『なにも考えていなかった』というのが正直なところだ。
なんとなく付き合い、面倒だと思いながらデートをし、生理的な欲求のために肌を重ねるだけの、味気ない付き合いだった。
しかし花純は、こちらのあからさまな悪態にも負けじと応戦してくるから、つい面白くなっていつもより口数が多くなる。
わかりやすくムッとする顔も、その、なんだ? かわいい……んじゃないかって、思うような、思わないような。
そんなことを考えていたら、俺は今度こそ眠りに落ちた。その間に料理を完成させた花純は、自信満々といった感じに目をキラキラさせていた。