エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

『たとえ腹が減っていても、俺はまずいものはまずいと言うぞ』
『望むところです。さあどうぞ』

 テーブルを挟んで花純と向かい合い、モツ煮込みを無造作に口に入れる。

 フン。まぁまぁだな……。

 最初はそんなふうに思っていたのだが、噛めば噛むほどにじっくり煮込んだモツの深い味わいが口の中いっぱいに広がった。

 そのくせ内臓特有のクセはなく、飲み込んでしまうとまたすぐ次を口に放り込みたくなる、病みつきの味。一緒に煮込んである根菜類は柔らかく、どこか懐かしい味わいがした。

 そういえば最近、野菜なんて定食の付け合わせの漬物か、トンカツの脇にあるキャベツの千切りか、インスタントのみそ汁に入っている申し訳程度のネギくらいしか食べていなかった。

 野菜って、しみじみうまいな。こんなにやわらかくて味わい深いモツだって初めてだし……。

 改めてそう思いつつ再び煮物に箸を伸ばそうとしたら、目の前の器はすでに空になっていた。食べるのに無我夢中で気が付かなかった。

 ……この勝負、悔しいが俺の負けのようだ。

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