捨てられ幼女は最強の聖女でした~もふもふ家族に拾われて甘やかされています!~
 嬉しそうに語った妹は、しかし次の瞬間には表情を陰らせた。
「あっちの世界で生きていた時みたいに、どうしようもなく行き詰まった私はもうどこにもいない。でも……」
 じわりと妹の瞳に涙が滲む。精神状態を不安に思うほどに、感情の変化が激しい。勤勉なローゼマリーのことだ。疲れているのだろうか。
 私の心配をよそに、妹はさらに続ける。
「同時に絶望もしたの。だって、シナリオ通りに進んだ場合、私の〝推し〟が……大切な人が死んでしまうんだもの……! そんなの絶対に嫌。耐えられないわ!」
 苦しげに口を閉ざした妹は、パッと私の手を離すと、今度は強く抱きしめてきた。
 息をするのが難しいくらいにきつい抱擁だ。思わず抗議の声を上げる。
「痛い、痛いよ。ローゼマリー……」
 しかし、妹はこれっぽっちも聞く耳を持ってくれない。
「それでね! 私、寝ずに考えたの。そして思い出した。ファンディスクの存在を!」
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