捨てられ幼女は最強の聖女でした~もふもふ家族に拾われて甘やかされています!~
 あの子が〝主人公〟だというのも納得だ。
 その美しさ、賢さ、そして膨大な魔力は、あらゆる人を惹きつけて止まない。
 妹は、物語の主役に足る魅力を日に日に身につけていった。
 そんな中、私は日々、ぼんやりと過ごしていた。
 初めは感じていた妹への憤りも、外へ出ることが叶わない絶望も、自分が置かれた境遇への苛立ちも……すべてがどうでもよくなっている。
 涙なんてとうに涸れ果てた。カサカサに乾ききった心を、冷たい床の上に寝転がって癒やすことくらいしかできない。なぜならば――。
「もうすぐ魔法学園での生活が始まるわ。私、楽しみで仕方がないのよ!」
 ――閉じこめられてから、すでに十年の年月が経っていたからだ。
 私は、いったいいつになったら死ねるのだろう。
 頭に浮かぶのは、命の終わりの瞬間をどう迎えるか。ただ、それだけだった。
< 21 / 56 >

この作品をシェア

pagetop