捨てられ幼女は最強の聖女でした~もふもふ家族に拾われて甘やかされています!~
『ゆっくり休め。ここにお前を害する者はいない』
 その人は歌うのを止めると、私の頭を撫でてくれた。
 ほうと息を吐いて、小さく頷く。するすると温かな手が私の輪郭を撫でる。
 私は全身から力を抜くと、安心しきって意識を手放した。

「……はっ……」
 目を覚ますと、そこは森の中ではなかった。
 自分がどこにいるのかわからず、視線だけを動かして状況を確認する。
 私がいたのは、レンガ造りの建物だった。建具はすべてアンティークで揃えられていて、落ち着いた雰囲気の部屋の中には、煙の匂いが漂っている。
 ――暖炉の匂いだ!
 あまりにも懐かしくて興奮してきた。
 十年もの間、私の周囲にあったのは、カビと埃のくすんだ臭いだけだったのだ。
 思わず鼻をひくつかせて、胸いっぱいにそれを吸い込む。
 ぎゅう、と拳を握れば、肌触りのいい寝間着を着ていることに気が付いた。
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