捨てられ幼女は最強の聖女でした~もふもふ家族に拾われて甘やかされています!~
 あの昏い地下牢から出られたというのに、私はまだ囚われたままなのだろうか。
 途方もない絶望感に襲われ、全身が震えだす。
 体を抱きしめて、なにも見ないでいようと目を瞑った――その時だ。
「――あっ!!」
 大きな叫び声と同時に、ドサドサとなにかが落ちる音がした。
 顔を上げると、ある人物と目が合った。
 それは少年だった。茶と白と枯れ葉色の三色の髪を短く切り、軽装鎧を身に纏っている。ポカンと口を開けたままドアの前で立ち尽くしていたかと思うと、床に落ちて散らばった洗濯物には目もくれずに、勢いよく踵を返していった。
「みんなァ! あの子が目を覚ましたっスよーー!!」
「本当か!」
 ドカドカと複数の足音が近づいてくる。
 なにごとかと呆気に取られていると、あの少年が人を引き連れて戻ってきた。
 彼らは一斉に私に駆け寄ると、怒濤の勢いで話しかけてくる。
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