奪って、浬くん
「そんなんだから、おれに手出されんだよ」
────ささやきと同時、影がおちてきた
唇に押しつけられた感触は、あたたかくて、やけにリアルだ。
3秒ほど重なって、離れた唇。
ぼうっとしていた頭を覚ますには、じゅうぶんすぎるもので。
「ぇ.....っ?」
唇に触れると、さっきの感触が残ってる。
うそ、夢じゃない......の?
じゃあわたし、ほんとうに浬くんに───キス、されたの?
「な、んで.....っ。キス.....!」
「....いやだった?」
浬くんはゆるりと首をかしげて、わたしの頬を包む。
ぜんぜん動揺してない、おすましガオの浬くんに、ズキッとする。
この温度差が、つらいの....。