奪って、浬くん
『なこ』って、やわらかく紡がれる度に、すこしずつ自分の名前がすきになって。
抱きしめてくれるあったかい胸も、頭を撫でてくれる大きなてのひらも、しってるのはわたしだけがいい。
浬くんを、ほかの女の子にとられたくない。
身勝手な独占欲は、日々強くなるばかりだった。
そう、きょうだって。
『浬くん、帰ろう』
『あー、ごめんなこ。おれちょっと呼び出しされてて』
『よびだし...って、』
『じゃ、おれいくね』
『っあ、かいりく.....っ』
呼びとめる間もなく、浬くんは行ってしまった。
放課後の呼び出しなんて.....コクハク、だよね。
こんなシチュエーション、いままでだって数えきれないくらいあったはずなのに。