幼なじみは一途に絡まった赤い糸をほどく◆おまけのお話追加しました◆
「ごめん、何でもないから」

「何でもなくないだろ。泣いてる理由聞くまでは帰らないからな」

そう言って、政宗は小春の手を取り遠慮なく部屋に上がり込んだ。

「横になる?」

帰らないからと強く言っておきながら優しい気遣いをされ、それが余計に小春の胸を締め付けた。

「ううん。……気分悪いのは嘘。ごめんなさい」

「いや、いいけど。それより……」

小春の考えが読めない政宗は困り顔になるが、顔を上げた小春の揺れる瞳に思わず息を飲む。
小春は小さく息を吸い込むと、一息に想いを吐き出した。

「政宗くん、他に彼女がいるなら私のことふってください」

「え、いないよ?」

「……じゃあ誰?」

「誰のことを言っているの?」

「今日も昨日も車に乗ってたでしょ?」

思い出すと目頭が熱くなる。
だが政宗は眉間を押さえながらため息混じりに呟いた。

「あー、あれか」

思い当たる節は一つしかなく、申し訳なさげに小春を見る。小春はじっと政宗の回答を待った。
< 105 / 120 >

この作品をシェア

pagetop