幼なじみは一途に絡まった赤い糸をほどく◆おまけのお話追加しました◆
自分が治してやるはずだったのに、小春はもう手術を受けるという。

政宗が医師免許を取得し立派な医師になるまで、まだ何年もかかる。それまで待ってくれなどというのはエゴにしか過ぎない。

病は待ってはくれないのだ。

そんなこと、政宗だってわかっている。
わかってはいるが、いざ現実を突きつけられると悔しくてたまらなかった。

医師への道程はまだ遠い。
だが小春は手術を受ける。
それは喜ばしいことじゃないか。

頭ではわかっている。
じゅうぶん理解している。
けれど、気持ちがついていかない

自分は何のために医師になるのだろう。

「……何のために?」

政宗は空を仰いだ。
穏やかに流れる雲も爽やかに吹く風も、政宗の心の中で吹き荒れる嵐には勝てなかった。
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