幼なじみは一途に絡まった赤い糸をほどく◆おまけのお話追加しました◆
「……俺は、医師には向いてないよ」

ボソリと呟き昼食の唐揚げを一つ頬張る。
誰にも言っていない、相手が直己だからこそ吐き出せた政宗の本心だった。

その言葉に同調してほしいわけでも否定してほしいわけでもない。ただ漏れてしまった心の呟きのはずなのに、口に出して音として耳に伝わると余計に言葉に重みが増す。

ずうんと心が重くなるようだった。

だが直己は明るく笑う。

「確かに政宗は医師には向いてない」

「……何だよ、それ。さっきは向いてるって言っただろ」

「医師になるよりも、俺と働く方が向いてる」

「……?」

「俺の元で働けよ。別の面から医療をサポートしてやろうぜ」

「別の面から?」

直己はどんな仕事をしようとしているのか、政宗は去年辺りに起業を持ちかけられたときのことを思い出すが、あまり覚えていなかった。

「カテーテルって聞いて何を思い浮かべる?」

「……何って、血管や消化管等に挿入して治療するための医療器具」

「その通りだ。じゃあこのカテーテル、種類はいくつあると思う?」

「それはかなりあるんじゃないのか?多種多様だろ?」

直己は頷く。
政宗には全くもって直己が何を言いたいのかわからなかった。
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