幼なじみは一途に絡まった赤い糸をほどく◆おまけのお話追加しました◆
小春20歳、政宗26歳
***小春20歳、政宗26歳***


おにぎり屋はショーケースにおにぎりが並んでおり、ショーケースごしに注文を受けるというスタイルだ。

奥で作業をしていた小春は人影に気付き、慌ててカウンターに顔を出した。

「いらっしゃいませ!」

スマイル全開で挨拶をして、あっと息を飲む。

「こんにちは」

「……まさむ」
「おーう、政宗、久しぶりじゃん!」

そこにはめっきり顔を見なくなった政宗が立っていて、小春が名前を発する前に優也も奥から顔を出した。

「そうだな、ずいぶん来てなかったかも。仕事が忙しかったんだ」

申し訳なさそうにする政宗は、濃紺のスーツにネクタイをきっちりと締め、以前よりも更に格好良さが増していた。とたんに小春の胸はドキドキとうるさく鳴り始める。

「やっぱりここのおにぎりを食べないと力がでないな」

「嬉しいこと言ってくれるじゃん。いつもの?」

「いつもので」

「小春、頼む」

「あ、はーい」

はっと我に返り、小春は政宗のお気に入りである天むすとワサマヨのおにぎりを丁寧にパックに詰めた。

政宗を見るのは二年ぶりくらいになる。
この二年もの間、政宗のことを忘れたことはなかったが、小春も専門学校に通いそれなりに学生生活を謳歌していた。だから自然と政宗のことを諦められたのだと思っていたのだが、それは間違いだったようだ。

社会人になってずいぶんと大人びて見える政宗は、小春の胸をいとも簡単にときめかせる。一瞬にして忘れかけていた恋心が戻ってきたような気がした。
< 61 / 120 >

この作品をシェア

pagetop