幼なじみは一途に絡まった赤い糸をほどく◆おまけのお話追加しました◆
話に花が咲く三人を見ていると、政宗は微笑ましいような少し疎ましいようなそんなモヤモヤした気持ちになってしまい、そっと小春に耳打ちした。

「小春、俺は先に車に行ってるよ」

「えっ、あっ」

スタスタと歩いて行ってしまう政宗に、小春は焦りを覚える。せっかく政宗に当たって砕けようと決意したのに、その気持ちがしゅるしゅると萎んでしまいそうになった。

「ごめん、小春の彼氏?」

「いや、違うけど……」

“違う”と自分で言っておきながらその言葉がぐさりと胸に突き刺さる。まだ政宗に気持ちを伝えてもいないのに、こんなことでは先が思いやられてしまう。

「そう?じゃあさ、今度航成と飲み会するんだけど、小春もおいでよ」

「あ、うん」

軽く返事をしつつも先に行ってしまった政宗のことが気になって仕方ない小春は、そわそわと落ち着かなくなった。そしてぐっと拳を握る。

「いや、ごめん。せっかくだけどまた。今日は会えて嬉しかったよ」

それだけ言うと、小春は二人に手を振って慌てて政宗を追いかけた。

「今度おにぎり屋行くよー」

小春の背に呼び掛けた亜季だったが、小春はもう振り返ることはなかった。

「なあ、亜季?今度の飲み会、航成の慰め会になりそうだな」

「確かに。航成くん、泣いちゃうかもね?」

二人がそんな話をしていたことを小春は知る由もなく……。
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