拾った宰相閣下に溺愛されまして。~残念イケメンの執着愛が重すぎます!~
「ああ! 素直じゃないところも、なんてお可愛い……」
「照れ隠しとかじゃないですから! どこから来るんですか、そのポジティブマインド!」
前言撤回。スル―するには突っ込みどころが多すぎる男、それがエリアスである。
どっと疲れてしまって、フィアナは大きくため息を吐いた。これ以上エリアスと話していたら、どんどん彼のペースに呑まれてしまう。サジを投げたフィアナは、くすくすと楽しそうに笑うエリアスを置いて、くるりと身をひるがえそうとした。
「じゃあ、エリアスさん。私、お店の手伝いがあるので戻りますね。どうぞお気をつけて」
「あ、気を付けてください。後ろに看板が……」
「きゃあ!」
エリアスの制止は、一瞬間に合わなかった。
ものの見事、店の看板の足にけつまずいたフィアナの体は、ぐらりと後ろにかしぐ。転ぶ! そう、ぎゅっと目を瞑った矢先、背中がとんと何かにぶつかった。
「大丈夫ですか、フィアナさん!」
心配そうに降ってきた声で、エリアスが背中を受け止めてくれたのだとわかった。おかげで転ばずには済んだが、そのかわり彼に寄りかかるような姿勢になってしまったことに、フィアナは慌てた。