拾った宰相閣下に溺愛されまして。~残念イケメンの執着愛が重すぎます!~

 グレダの酒場は、フィアナの両親、ベクターとカーラが中心街の近くで営む、中規模くらいの酒場だ。大通りに面した店に比べれば店の規模も、客の入りも落ちてしまうが、贔屓にしてくれる常連客がしっかり付いていて、毎夜そこそこの賑わいを見せている。

 店が売りにしているのは、親戚伝手で仕入れている旨くて種類豊富なエールと、店主ベクターが作る北部の田舎料理。そして、店主同士の仲が良いため特別に仕入れさせてもらっている、大通りの人気店ココルベーカリーのパンだ。

 そのココルベーカリーの店主の息子が、フィアナの幼馴染のマルスであり、「フィアナとエリアスの結婚式はいつなんだ」などという爆弾発言をかました張本人だ。

「わかった、わかった。お前がその、宰相だか何だかと結婚するっていうのは、間違いなんだな」

 フィアナの取り乱しように驚いたのだろう。どうどうと彼女を宥め、マルスが言う。そんな幼馴染を、ぜえぜえと息をしながらフィアナは睨んだ。

「間違っているうえに、まかり間違ってそんな誤情報がエリアスさんの耳に入ったら、本当に教会を予約してから迎えに来そうだからいますぐに忘れてほしい」

「そんなに!? ていうか、大丈夫かソイツ?」

「大丈夫か大丈夫じゃないかで言ったら、確実に大丈夫じゃないタイプのひとだけど、もう毎日会っているから慣れた」

「いや、それ、大丈夫じゃないだろ……」
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