渚便り【完】
「ここで別れよう」
「バス来るまで一緒に待つよ?」


俺達は元々別なレールの上を歩いていた。
今回はたまたまその軌道から外れてしまっただけで。
だからまた歩むべき道に戻らなければならないと、幾度となく自分にしつこく言い聞かせた。

きっと俺と伊波の歩く道が再び交わることは、この先決してないだろう。
というよりあってはならない。
悲しいが、そんな気がしてならなかった。


「いや、ここでいい」
「そっか。わかった」


物理的距離に負けることなく遠距離恋愛をするとか、進学先の大学を一緒にするだとか、そういう未来を描かなくなったのは多分俺達が少しずつ大人になろうとしている証なのだと思う。
年をとればとるほど、無慈悲な現実を突き付けられる機会も増える。
そうして俺達は時間に逆らうことも許されず、黙って大人になっていくしかないのだ。
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