渚便り【完】
もう夢を見るのはやめたんだ。この期に及んで悪あがきなんてみっともないから。
だから現実を受け入れて、こうして家庭も築いた。それが仮初の気持ちだとしても構わない。

手にしていた手紙を静かに破り捨てる。潮風に乗って、紙吹雪が宙を舞う。
私は水平線がくっきりと映る海を見据えた。


「ねえ、間瀬。間瀬は今この海のずっと向こう側で、心から笑えているかな?」


虫の鳴くような声でした問いかけに、当然返事はない。

これは小瓶の中に閉じ込められた雁字搦めの想いだけれど、私が間瀬を好きでいた気持ちは確かにここに存在していた。
そしてそれは今もまだ――……。



【渚便り】
< 110 / 110 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:51

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

表紙を見る
受得る -jewel-【完】

総文字数/4,019

ファンタジー12ページ

表紙を見る
巡り行く季節の中心から【連載中】

総文字数/35,719

青春・友情97ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop