渚便り【完】

思い返すのはあの手のひら

私は幼少の頃から近所に住んでいるお兄さんにとてもよく懐いていた。
ただ、それは私に限ったことではなかった。


「アニキー!」
「おう、どうしたなぎさ」
「あそぼあそぼー!」


お兄さんの名前は新垣代助(にいがきだいすけ)といって、非常に面倒見の良い彼は私を含めた周囲のちびっこから「アニキ」と慕われていた。
外を歩けばいつも遊び相手をしてやっている子供に捕まり、まるで昔のRPGにあった勇者についていく仲間のように、後をついて回られる光景は見慣れたものだ。
かくいう私もアニキの姿を発見したら、はしゃいで近寄っていくことが当たり前であったのだけれど。

つまりアニキはモテモテの人気者だったのだ。
勇敢で運動神経抜群なアニキは、あの頃の私達からしてみれば言わば戦隊ヒーローに登場するリーダー的ポジションのような存在に近かったのかもしれない。
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