渚便り【完】
「あはは、海にゴミ捨てるなーって怒られちゃうかも」


でもやってみたかったんだよねー!と伊波は明るく続ける。
その笑顔の裏側でどれほど辛い感情を渦巻かせていたか知ってしまった今となっては、とてもじゃないけど容易く笑い返すことなんてできなかった。
代わりに喉の奥から否定の言葉が込み上げくる。


「ゴミなんかじゃねーよ」
「……え?」
「伊波の大切な想いを綴った手紙じゃん」
「……そだね」


ふっと辺りが薄暗くなる。
ゆっくりと降下を続けていた夕陽がようやく海に隠れたようだ。
見上げた空には居場所を主張するかのようにまたたく星の存在が目立つようになっていた。
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