渚便り【完】
お別れ会の時も考えていた。伊波の笑顔は今日が見収めだと。
あの時は腸がちぎれそうな思いでいたけど、この三日間を積んでしまった今では、体中の臓器という臓器がもぎ取られそうなほどに辛い。

とうとうこの日がきてしまった。伊波は明日沖縄に帰る。
もうこの場所からいなくなってしまう。
こうして向き合って話すこともできなくなってしまう。

いやだ。行かないでくれ、伊波。
せっかくたくさん話せるようになったのに。
俺から話し掛けられるようになったのに。
もっといっぱい話したいことがあるのに……!


「ばいばい」


同じ別れの言葉でも、昨日別れ際に聞いた「またね」とは全く意味が異なる。
また、は無いんだ。

本当にこれが最後なんだと、張り裂けそうな胸の中で理解した。
< 50 / 110 >

この作品をシェア

pagetop