渚便り【完】
結局試合はボロ負けだったけど、この出来事がキッカケで俺は伊波に好意を寄せるようになった。
あの荒んだ空気を独自のテンションで一変させた伊波の雰囲気には、惹かれるものがあったんだ。
多分俺以外にもこの時伊波の魅力に気付いた奴は少なくないと思う。

伊波が転校してきてから約一年、俺が伊波を意識し始めてから半年ほど経った今日、


「――それじゃみんな、一年間という短い間でしたが、仲良くしてくれてありがとうございました!」


限られた色しかないチョークを駆使し黒板に書かれたカラフルな“お別れ会”の文字に、俺はやるせない思いでいっぱいだった。
色紙を抱き締めながら教壇に立つ伊波の笑顔を見ていると、複雑な気持ちにさせられる。

担任が他の教師と相談し、六時間目に自分の担当する教科をあて、授業をせずに行われたお別れ会。
椅子取りやハンカチ落としといったゲームやら雑談会やらをして、なんだか小学校の頃に戻ったかのような気分だった。
あっという間に終わってしまったその時間の後、そのまま帰りのホームルームも済ませ解散する一同。
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