渚便り【完】

偶然に偶然が重なった必然

大好きなサッカーを続けながら三年の月日を過ごした。
こういう時、時間が経つのはあっという間だった、なんて常套句をよく見かけるが、俺にとって三年間はとても長く感じられた。

その理由は定かではないが、断じて学校生活に不満があるというわけではない。
人生の転機でもある受験には特に躓くことなく、親しい連中と共に近場の高校に進学してからは中学同様サッカー部に入れたし、遅れてきた成長期のお陰で作田や林崎と並ぶくらい身長も伸びた。

そしてこうして修学旅行で青春を謳歌できている。
俺は毎日を年相応に楽しんで、この現状に満足しているはずなんだ。
なのに俺の心にわだかまりがあるのはなぜだろう。


「隆也も一緒に泳ごうよ!」
「あー、まあ、そんな慌てんなって」
「えーでももう海来て1時間も経ってんじゃん」


海からあがってきた彼女が、スイカ柄のビーチボールをシートの上に座る俺の方へ投げてきた。
部のマネージャーを務めていることがキッカケで親しくなり、高校一年のバレンタインに告白されたのを機に、軽い気持ちで付き合うことになった彼女。
少しワガママなところもあるが、顔は可愛い方だし思いやりもあって、なんだかんだで憎めない女だ。
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