渚便り【完】
「おい、これって……」
「あはは。それも大切な思い出だからね」


一枚だけ見覚えのある制服が写った写真があると思ったら、俺達が中学二年に進級した時の集合写真であることに気付かされて、無性に恥ずかしくなった。
確かこの時って、林崎が無意識にダブルピースしたのをカメラマンに注意されたのがなぜかツボにハマって、シャッターをきられる前に不自然にニヤけちゃったんだよな。
しかも俺チビだったから一番前で座っているし。
こりゃ色んな意味で黒歴史な一枚だ。

おかしくなって笑いを零していた俺だけど、次に見やった写真、というかプリクラには失望させられた。
伊波と知らない男の2ショット。
“付き合うことになりました”というラクガキの文字。
ハートのスタンプなんかは、俺がいつしか一緒にゲーセンに遊びに行った彼女にせがまれて、面倒に思いつつも付き合ってやった時に撮ったプリクラを思い出させた。

そしてそのプリクラを強制的に待ち受けにさせられた携帯が今ポケットの中にあるという事実は、歯止めをかけていた俺を良からぬ方へ煽ることとなった。
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