勇者がうちにやってきた▼【完】
どうしてこんな有能なことを失念していたのだろう。人は切羽詰まると冷静な思考を奪われてしまうものだ。
次にすべきことを明確にさせた親分は、改めてあーくんにお礼を言ってコンビニを出るなりギン太に駆け寄った。
この世界じゃシルバーウルフではなく、ハスキー犬と化しているギン太だけど、どちらにせよ嗅覚は敏感なはずだ。
だったらまずちよこさんのにおいがする何かを用意するべきだと思った私は、親分に一度家に帰ることを提案したのだけれど、


「ギン太!このにおいを辿ってくれ!」


どこから取り出したのか、親分の手にはレースのついたブラジャーが握られていた。
そのサイズは明らかに大きいもので。


「ちょっと親分!それどうしたのよ!?」
「抑え切れなくなって一枚だけ拝借した!」
「拝借って言葉の意味知ってる?それ借りてるんじゃなくて盗んだんでしょ!」
「ダイジョーブだって!洗濯前のものだから!」
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