勇者がうちにやってきた▼【完】
私は部屋の隅に避難して、歌本を盾代わりに持っておいた。


「オレの大切なちよこちゃんに怖い思いさせやがって!だいたい歩かせすぎなんだよタコ!タクシーで移動しようとか考えなかったのか!?」

「うるせぇ手持ちの金がそんなに無かったんだよ!小百合がお小遣い制にしてるせいでこちとら金欠なんだよ!アイツがどっかの馬鹿ホストに貢ぐから!」
「馬鹿なのはテメェのカノピッピだろうが!テメェに魅力がないからホスト遊びになんてハマるんだっつの!カレピッピなら責任もってカノピッピのこと繋ぎとめておけや!」


私は激しい殴り合いを横目に、戦意を駆り立てられるような曲を検索して流してあげることにした。
ここまできたら最早ギャグの領域だ。
当人達は真剣かもしれないけど、私にしてみれば理由がくだらなくて萎える。

こんなトラブルに巻き込まれたちよこさんに同情したいくらいだ。
しかしそんな私とは裏腹に、ちよこさんは二人の顔を交互に見てはうろたえている。
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