勇者がうちにやってきた▼【完】



騒ぎになるのは御免なので、店員に謝罪して料金も人数分きちんと払い、速やかに外に出た一行。

どういう風の吹きまわしなのか、親分とケンジさんはなぜか和解していて、親分が「もっと魅力的な男になって小百合ちゃんを見返してやれ」などとアドバイスしていた。
なにその、「強いな」「お前もな」みたいな、少年誌の喧嘩シーンのあとの空気。
拳で語り合うというのは、私が思っている以上に奥が深いのかもしれない。

先に帰ったケンジさんの後ろ姿を見送り、私達もタクシーを呼ぶことにした。
ギン太は大きなぬいぐるみとでも誤魔化せばいけるだろうか。正直不安なところではある。

ビルの間から覗く空が少しずつ明るくなり初めていて、青と橙の混ざった綺麗なグラデーションを生み出している。
もうすぐ日の出だろう。
こんな時間まで出歩いているなんて、初めての経験かもしれない。
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