夜のすべてでずっとすき
朝が来る
「これは、あー……と、例え話なんだけど」
ぜったい5秒はあった。確信して、聞く。
「何、いまの間」
途中、後頭部に手をやって、髪をかき混ぜるような動きもしていたよね。
「迷った」
「──それ、ほんとに例え話? 例え話ってていで本音言おうとしてる?」
正面を向きながら言って、それからちらりと目を向ける。
夜。真夜中とまではいかないけれど、冬の夜は早くて深くて濃い。
吐く息が白くて、昼よりも冬の匂いがする空気感に包まれて、速水はわたしの1歩だけ前を歩いていく。
「べつに、どっちだっていいよ」
それは、解釈をこっちに任せるということだろうか。それともあきらめ?
「で! 例え話するとさ、綾元、おれが急に告白したらなんて言う?」
「は?」
疑ったりしてごめん。それは間違いなく例え話でしかなかった。
「なんて言う……。手紙じゃなくて直接言われるってことでいいの」
「おん」
中途半端な覇気のない返事に、若干、いらっ。いやいや、これは、ただの八つ当たりだけども──わたしばっかり掻き回されるようで、なんか、ずるいじゃん。
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