夜のすべてでずっとすき
「んー……実現しなきゃ、わかんないけど」
前置きは完璧だ。だって、実際、どうなるかわからない。可能性としては泣き出す。
ただ、まあ、前から頭の中でシミュレーションしていたようすだと、わたしは5回は『ほんとう?』と聞いて、確信がもてたらやっと返事をする、となっている。
「ほんとうかどうか、いっぱい聞く」
「あれ、おれのこと信じてくれない感じ?」
おどけて言われたけれど、まったく気持ちがあがらない。べつに面白くないよ、その決め顔もさ。
「速水を信じる信じないじゃなくて、わたしの夢か否かを考えるタイム」
「……返事までの時間稼ぎ?」
「それもちょーっとだけあるけど、速水はわたしでは思いつきもしないことを言い出すから、夢かどうかすぐわかるの」
あんのかよ。わらった速水が、夜色の濃い前髪をかきあげて、夜色を煌めかせる瞳をまぶたに覆わせた。
その速水の夜がすきで、だいきらい。
「もっと信じてほしいなあ」
「……無理だよ」
「だって、ほら。おれついてきてるよ? 優しい男だから、ねえ?」
何が ねえ? よ、ばか。コンビニ行きたいなんて言い出したわたしについてきてくれたの、それはありがとうだけどさ、でも、ごめん。わがままで、ごめん。ここには、来て、ほしくなかった。