【完】黒薔薇の渇愛
ポンッと、桜木の手が。らしくない優しさで私の頭を撫でる。
その時不覚にも、ドキッときてしまった。
この男相手に。
「帰るよー。念のため俺の背中に乗って。
君、今腰抜けて歩けないでしょ?」
「えっ……でも、いいの?」
「なにが?」
震える身体でチラリと、奏子を見る。
桜木は「あー、うん。」と一言吐いて、数秒後また口を開いた。
「天音ちゃんに助けてもらったお礼に、今回は大人しく天音ちゃんの言うこと聞いたげる」
「だっ、だってもしかして桜木死んでたかもしれないんだよ!?」
「その言い方だと、まるで岡本奏子君にお仕置きしてほしいみたいな言い方なんだけど~」
「……それは」
「お人好しは殺されかけてもお人好しってことねー。
だからこの俺が言うこと特別に聞いたげるって言ってるの。
早くこの場から出ていかないと、あいつの顔見てムシャクシャしちゃうから早くして」
「あっ、うん……」