【完】黒薔薇の渇愛
恐る恐る桜木の背中に乗る。
重いと思われたくない少しばかりの乙女心を、桜木は見透かしていたのか。
「もっと体重、俺にかけないと。きついでしょ?」
「でっ、も」
「いいよ天音ちゃんなら」
「……」
「天音ちゃんなら、いいよ」
「……っ」
なんで二回言ったの。
ていうか、こんなの。
私が知ってる桜木じゃない!!
優しすぎて不気味すぎる。
でも、冷たいと思っていた人の背中があまりにも暖かすぎて。
こんどは安心と言う脱力感が生まれる。
もう一度この目で奏子を見てみた。
奏子は「あっ……あっ……」と、自分が怒り任せに行った行動に罪悪感どころではない、もっと暗いところまで気持ちが堕ちていってしまったのか。
壊れたように、同じ言葉ばかり繰り返して
正気ではいられなくなっていた。