【完】黒薔薇の渇愛
一言、優しい声で返されただけで何だか調子が狂う。
変な緊張を感じて、グッとココアを飲むと。
ジッと私の顔を見つめる桜木の視線を、目の端で受け止め、つい飲み干してないココアを吐き出してしまいそうになる。
「なっ、なに」
「いんや、なんで俺なんか助けたのか気になって」
「……身体が、勝手に動いたから」
「……ふーん」
「てか、人が刺されるところなんて誰だってみたくないでしょ」
「……じゃあ自分は刺されてもいいんだ?」
「……へっ?」
「俺なんか庇って。
もし俺が石を投げてなかったら、天音ちゃん大怪我どころじゃ済まなかったよ」
「……」
何かを弾く音が聞こえたのは、桜木が私の後ろから咄嗟に
奏子の手に持つ小型ナイフに向かって石を投げたからだったんだ。
……ナイフに石を命中させた桜木のコントロールが恐ろしい。