【完】黒薔薇の渇愛
「今日乗り気じゃないんだよねー、ダルいしさー。
天音ちゃんに癒してもらうから、雪ちゃんはサヨナラグッバイだよねー。
ねー、天音ちゃんも俺といたいでしょ?」
こてん、と。首を傾げて聞いてくる桜木はあざといと思う。
ていうかこの人誰だ。
私の知ってる桜木はもっと危ない奴で。
本能……そう、本能からこの人とは関わってはいけないと危険通知がやってくるぐらいなのに。
「天音ちゃーん」
変な男に懐かれてしまった。
いや……飼い慣らせる気がしない。
ていうか、これも気まぐれだったりして……?
「あっ、そうだ。
だったら天音ちゃんも連れていけばよくなーい?
そうしよう」
ガシリと桜木に手首を掴まれ、私も雪羽さんも目が点になる。
……時すでに遅し。
桜木は私と雪羽さんが反応する前に。
「そーれ、レッツラゴー」と、音符を周りに撒き散しながら、私を引きずりながら歩き始めた。