【完】黒薔薇の渇愛
もう呆れたと言わんばかりの雪羽さんが、頭を抱え首を軽く横に振る。
言葉すら吐くのがめんどくさくなったのか、今来た道を引き返して、雪羽さんは停めたバイクを取りに行ってしまった。
「ねーねー天音ちゃん」
「は、はい……」
「ギュッして」
「はい……って、えっ!!?」
雪羽さんが居なくなった途端、何言ってるですかこの人!?
驚きすぎて掛けているメガネがずり落ちたけど
桜木の手に寄って整えられる。
「なーに焦ってんの、かわいー。
手、ちょっとだけギュッとするだけでいいから」
「な、んで?」
「いいから早くしろよー」
「……」
半ば強制的に桜木の手を恐る恐る握る。
だって今日、機嫌いいんだもん。
今の機嫌を損ねたら、私こんどこそ宇宙のチリになってしまいそうな勢いだったから……ほんとしょうがなくだよ。
どんな反応していいか分からず、とりあえず桜木を見たら。
桜木は美形を崩さず、にんまりと笑顔を見せる。
「そっかー天音ちゃん、そんなに俺と一緒にいたいのか~」
「えっ」
「それなら天音ちゃんも一緒に行こうねー、族の集会」
「……えっ、……ええっ!?」