【完】黒薔薇の渇愛




この男の言うことを真に受けてたら
いつか私、ストレスで胃に穴があくと思う。


げっそりしていて、気づかなかった。


桜木の手が私の唇に伸びてきて、触れたことに気づいたのは、彼の指先の体温があまりにも冷たかったから。


アイスクリームを口につけたときの、あのひんやり感と一緒で驚く。



「キスくらいはちゃーんと、好きな男にとっとかなきゃね。」


「……」


「天音ちゃん夢見がちだから。」


「……」


「でも」



トントンと、桜木は私の唇に触れていた人差し指で、自分の唇に触れる。



「俺はいつでも大歓迎だから。
 したくなったら、遠慮なくどうぞ」



「……っ、しないしっ!
 てか勝手に触らないでよ!!」



「なんで?キスされると思った?」


「……っ」


「あっはー、図星?
 でもね、髪食ってたから避けただけだよ」


「……」



「なーに期待してんのかな?天音ちゃんの変態さんめ」



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