【完】黒薔薇の渇愛
神様、どうか、どうか。
この男に一発おみまいできる怪力を私にください。
猫みたいに威嚇したところで、余計桜木を楽しませてるだけな様な気がして疲れてくる。
隣にいると危険な様な気がして、二歩ぐらい軽く距離を取ると。
「ちょっと……いやだいぶ遅いんじゃないですかー、桜木さん」
土手の階段を上がってくる足音と声の正体が、私たちの前でピタリと止まる。
反射的に後ろを振り返り、桜木の前に立つと。
桜木は私の肩を受け止めるように掴んで、真っ直ぐと声の主に目を向けた。
「朱光やっほー。
もう皆揃ってる感じ~?」
「桜木さんが女とイチャッてる間に、逢美全員揃いましたー。
雪羽が怒ってましたよー、『道草を食わなきゃ、目的地に着けないのかあの人は』って。」
「ひどーい雪ちゃん。
俺はただ天音ちゃんがドライブ行きたいって言うから、ワガママに付き合ってあげた心優しい人間なだけなのに」
「はいー!?」