【完】黒薔薇の渇愛
桜木のイライラの行き先は、取り出されたライターとタバコにすべて預けられる。
咥えたタバコを口から離し、ユラユラと揺れる吐き出された煙は、私の頭を真っ白にさせる。
さっさとこの場から居なくなりたいと思った。
「……けど、俺は損得なしで君には優しくしたいと思ったよ」
耐えられないほど重い空気に、押し潰されそうになっていると
次の瞬間、返ってきた言葉はあまりにも優しくて私は目を見開く。
冷たい男がうってかわって柔らかい雰囲気を纏う。
その時、白い煙が夜の世界に連れ去られ消えていき。
彼と真っ直ぐ目が合ってしまう。
もう、ーー逸らせない。
「だから、『大嫌い』って言われて、ちょーっと傷ついてる俺の気持ちにもなってくれる?」
「なに……なんで、」
なんで、この男は優しい目付きで
そんなこと言うんだろう。
胸の奥が熱くなる。
スゥー……っと、さっきまで感じていた嫌な気持ちが
不自然なほど綺麗に消えていく。
「……なんで?
さあ、なんででしょう。」
「……」
「でもまあ……君が俺を損得関係なしに助けてくれたからじゃない?
君に……触発されたのかもね」
「……」
「天音ちゃん色に染まるってーのも、悪くないかも」