【完】黒薔薇の渇愛
フワッと、桜木が眉を下げて笑う。
その時、胸の奥で心臓の音がドクン……と鳴り響いたとき。
苦しいはずなのに、それは妙に甘さを含んでいた。
なに……これ。
ドキドキする。
死んじゃうんじゃないかってほど。
胸の鼓動の正体が知りたくて
もう一度桜木の顔を見てみた。
だけど、やっぱり。
「……なーに、そんなに俺の顔見て?
いい男すぎて惚れちゃった?」
甘い音が、身体中を支配する。
それに気づかない振りをしようとしても、きっともう遅い。
好きになったとは言わない……。
でも、確実に惹かれはいってるんだ。
冷たくて、正直で、欲望に忠実な
甘くて危険なこの男に。