【完】黒薔薇の渇愛
「とりあえず、水入れてくるから待ってて。」
心配しているからこそ、自分に何ができるか行動に移す桜木。
でも……彼の温もりがなくなった瞬間、また胸はザワついて、怖くなる。
だから。
「やだ……っ」
手を伸ばし、こんどは自ら彼の背中に抱きついた。
「行かないで……」
「あまねちゃ、」
「離れていかないで……っ」
私が素直になるなんて、桜木は思ってもみなかったと思う。
だからだろうか……彼の顔から驚きを隠せないのは。
それでも桜木は、振り返って私の腰に腕を回した。
壊れ物を扱うような優しい手つきで、彼は私に触れる。