【完】黒薔薇の渇愛
まだまだ寒さが続くこの季節。
冬の夜は空をネイビー一色に染め上げる。
桜木は異性だ。
男の人の部屋に長時間いるのも気が引けるし、何より最近帰りが遅いと母に心配かけてばかりで。
男に襲われそうになった恐怖はまだ心にこびりついたまま。
だから、桜木とまだ一緒にいたかった、安心させて……ほしかった。
それでもひっきりなしに鳴る携帯の液晶画面には、『お母さん』の文字。
辺りは暗くなっても、部活生が帰り道をチラホラ歩いているほどの時間帯。
心配してくれる母の気持ちを考慮して、私は桜木に家の前までバイクで送ってもらった。
「……コンビニの前でよかったのに」
桜木に家を見られるのはちょっとだけ恥ずかしくて、ついつい可愛くないことを言っちゃう。
「まーた何かあったらどうするの?
怖い思いしたなら黙って甘えちゃえば楽なのにねー。」
「だっ、だって男の人に家まで送ってもらうの初めてだから……なんかむず痒いんだもん」
「ほーん。つまり君の初めては俺が奪ったってことか」
「……誤解させるような言い方しないでよ」
「そっちこそ。あんまり無意識に男を煽るようなこと言ってっと、後々大変なことになっちゃうよ?
……とくに俺みたいな男は我慢しないから、危ないかもねぇ……?」