【完】黒薔薇の渇愛





桜木はおかしい。


私の事……好きじゃないくせに
期待させる様なことを言う。


会いたいって……思ってくれてるのかな。



携帯番号も知らない。


会う機会だって、タイミングと何か事が起きなければ、私たちに一緒にいる理由なんてない。


そう考えると、彼との距離は
近いようで……かなり遠いんだ。



「なーんかこの服、天音ちゃんの匂いがするー。」


左右に開いた袋から、こもっていた匂いが飛び出したのか、桜木が私を見ながら言う。


「わざわざ洗濯してくれたの。ありがとさん」


「だって、洗って返さなきゃ……その」


汗の匂いとか、残ってたら嫌じゃん。



「あらら、女の子はいろんな事気にするんだね~。
 別に俺は気にしないのに」


「私が気にするの!」


「じゃあ今日は、これ抱いて寝ようかな。
 天音ちゃんを抱き締めてる気分になれるかも?」


「……っ!?やっぱ返して!!」


「いや、俺のだし」


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