【完】黒薔薇の渇愛
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束の間の安心感とはこのことだ。
次の日学校に行くと、校門前で私を待っていたのは
相当お怒りのれみ子たち。
この人達を目の前にすると、喉は渇くのに、血の気が引いた体は冷えていく。
ジリッ……と、一歩後ずさると。
後ろから誰かに肩を掴まれ、ビクッと過剰に反応した。
恐る恐る顔だけを後ろに向けると。
「おはよー、天音ちゃん。いい天気だねー」
いるはずのない桜木が、学ラン姿で日の光を浴びている。
「なっ、なんでここに……」
目が点になる私に、桜木はなに食わぬ顔で目の前にいるばつが悪そうなれみ子たちを見る。
「んー?天音ちゃんのことが心配で来ちゃった感じ~?
なぁに、朝っぱらからいじめられそうになってるの?天音ちゃん。
助けてあげよーか」
ニッコリと笑う男の顔に、れみ子たちは異常に反応する。
まるで桜木のことを知っているみたい……。
でも昨日れみ子達にされたことを、桜木には話してない。
だから知ってるわけ……ないと思うんだけど。
桜木だって、れみ子たちのことに知らないって顔してるし。