【完】黒薔薇の渇愛




読めない男の心境を、知りたがったところで
この男はきっと誤魔化すに違いない。


なんとなくれみ子達に視線を向けるのが気まずくなり、私は黙って桜木だけを見つめる。
彼の顔を見ると、ひどく安心する。


桜木と同じ学校だったらよかったのにって、見慣れない学ラン姿にドキドキしている自分がいる。



「昨日ちゃんと眠れた?」


「うっ、うん」


嘘、桜木と優理花さんのことが気になって眠れなかった。

あと、おてごにキスされたこととか……。


「ほーん、眠れないように魔法をかけてあげたのに効かなかったか」


「えっ?」


「キース、天音ちゃんのおでこにしたでしょ?
 夜俺のこと思い出してくれたらなと思ったんだけど、眠れたかぁ……ザンネーン」


「……あのね、寝れなかったらどうしてくれるの」


寝れなかったけど。


「いいじゃーん、俺のことだけ考えとけば。
 嫌なこと思い出さずに済むでしょ?」


「……っ」


「まあきっと、寝れなかったんでしょうね。
 目の下のクマ隠せてないよ、天音ちゃん。
 魔法、ちゃんと効いてんじゃん」




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