【完】黒薔薇の渇愛
それを言うべきか言わないべきか、悩みながら口だけを開けていると。
「あっ、"黒薔薇"がいるってマジじゃん」
「すげえ……!本物だ」
私たちがカラオケの建物から出ようとした時、少しだけ傷んでいるドアから男ふたりが入ってきた。
見るからに不良ふたりは、物珍しそうに好奇心を含む目で桜木を見ていた。
……黒薔薇ってなんだろう。
気になるけど、そんなことより胸にある不安をさっさと取り除きたくて
桜木の顔を覗く。
すると。
「……っ」
息を呑んだ。
だって桜木、すっごく怖い顔をしているから。
「桜木……どうしたの?」
「いや、なんでも。
それより気分悪いから、さっさとこの場から離れようか」
「えっ、大丈夫なの?」
「天音ちゃんさっきからうっさい。
自分の心配してな」