【完】黒薔薇の渇愛
そんなこと言われても、気になるものは気になるじゃん。
けど桜木に口答えしたところで、後で倍返しされるって分かってるから、口を閉じる。
それでも、私が空気を読んだところで
桜木を見ながら『黒薔薇』と言った男たちは、機嫌の悪い桜木に話しかける。
「ここに黒薔薇がいるって聞いたんで、俺ら来たんすよ~」
「超憧れてます!一言でもいいから黒薔薇と話したくて」
若いって怖いもの知らずだと思う。
幼さが抜けない不良ふたりは、桜木に詰めよるけど。
横にいた私とバチッと目があって、なぜか急に吹き出し始めた。
「えっ、えっ、まさかこの人彼女じゃないですよねー?」
「バカ言え、ここ"そういう"ことするカラオケ屋だろ。
そのお姉さん黒薔薇に遊ばれてんだよ、察しろよ」
「だよなー、……黒薔薇と似合ってねーし」
顔を合わせて数秒も経っていないのに
すごい言われようだ。
……桜木の顔は整っていて、確かに地味な私とは大違いだけど。
そこまで言わなくてもよくない?
でもこういう言われようは慣れてるから
私は簡単に無視できたんだけど。