【完】黒薔薇の渇愛
「君たちさ、俺に喧嘩売るためにわざわざここまで来たの?」
ご機嫌斜めな桜木は違ったみたい。
ヘラヘラしている男の胸ぐらを掴んで、睨みを利かせた桜木がーードンッと乱暴に壁に押し付ける。
胸ぐらを掴まれた男は突然の事に「ひぃ……!」と小さい悲鳴をあげた。
「天音ちゃんに遊んでもらってるのは俺の方なんだけど?勝手なこと言わないでくれる?」
「……っ」
「それと、『黒薔薇』って呼ばれんの俺大っ嫌いなんだよねー……。
呼ばれる度、そいつのこと許したことないんだけど」
「……」
「俺さ、天音ちゃんの前ではイイ子ちゃんでいたいからさー……今日は見逃してあげる~。
君たち天音ちゃんに感謝するんだよ?ねっ?」
桜木の言葉に不良ふたりは勢いよく頷く。
桜木は男から手を離すと、私の手首を掴んでまた歩き出し、何事もなかったかの様に建物から出る。